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こういうことはこれまでないことであった
彼の前にもコーヒーが置かれている。ちょうど店内は一日の中でいちばん閑散とした時刻に当っているらしい。二人の他に客は一組しかいなかった,TUMIトートバッグ。「だってえ」「とても欲しいよ」 美奈子は俯いたまま腕の時計を見た。「いいんですか、お仕事」「仕方ない。それに緊急な仕事ってのはないんだ」「お店に入ってくださる? 一緒に」「もちろん」 美奈子の眼も欲情に潤んでいる。美奈子の眼は潤むと、瞳の水晶体の色が薄れてくるように諸岡には思われる。 彼は店を出る前に、事務所に電話し、なにも急用が起きていないことを確かめ、行く先々で電話すると女事務員にいった。 諸岡と美奈子はタクシイに乗った。行く先はいつもの旅館である。「すごいスリルだわ、こんなに興奮したことってないわ」 タクシイの中で美奈子はそういった。諸岡も同じ心境である。彼は美奈子の耳に、「すごく欲しい」 といい、美奈子の手を自分のズボンの股間に持ってきた。美奈子は一瞬触れてから、その手を引き、窓の方に顔を向けた。美奈子の体が、手を引いて二、三秒経ってピクンとなった。 旅館に着いたからといってすぐに抱き合うわけにはいかない。女中がお茶を持って出入りするからである。その間、諸岡と美奈子とは黙りこくっていた。ふだんなら、他の話をしている。照れくささから他の話をするのだが、今はそういう気持は双方ともまったくない。黙りこくることで自分たちの欲望を強く煮つめようとでもいったふうでさえある。「お風呂に入る」 と美奈子はいったが、諸岡は許さなかった,tumi バッグ。いつも先ず風呂に二人で入る。諸岡は、風呂の中ではまだ充分の態勢がとれていない。だから、風呂から出るまでわりあい淡泊にしておれたのだが、この日はそうはいかなかった,tumi 26141。既にアマンドの二階にいる時から態勢は整っていた。 美奈子の丘はすっかり刈り取られ、蒼々として、僅かに血を滲《にじ》ませている箇処さえあった,tumi アウトレット。諸岡は、美奈子を押し倒し、手順を省いて接していた。美奈子の方も、充分に迎える体になっている。 美奈子の敏感な体は、この日、最高のものとなった。初めからしゃくり上げるような声を上げたと思うと、それが、小止みなく続くのである。美奈子の体は緻密《ちみつ》な感覚を諸岡に伝え、その緻密で閉塞《へいそく》しようとする感覚は諸岡に持続力を賦与《ふよ》し、美奈子の口から、うわごとのようなものが洩れるのを諸岡は聞いた。こういうことはこれまでないことであった。「ちゃんと返さないと……」 なんの意味か美奈子はそんなことをつぶやき、啜り上げたのである。 諸岡は、美奈子の頬を軽く叩いてみた,tumi ビジネスバッグ。美奈子は眼を開けようとしたが、眩しそうで、開くことができない。「なにを返すんだって?」「え?」 シャックリのような呼吸音の中から美奈子は小さい声でそういった。諸岡は、美奈子のうわごとめいた言葉をもう一度いってきかせた。「うそ」「うそじゃない」 美奈子は眼を開けることができない。眼を閉じたまま、美奈子は「いやいや」といって諸岡にすがってきた。 美奈子の恋人がどんな男か諸岡の気がかりは強くなってくる。興信所に頼むという手もあるが、それはしたくない。 諸岡はその男から電話がかかってくるかと待っていたが、なかなか電話はなかった。 月日が経ち、諸岡は赤坂の朝鮮焼肉屋で見かけた鼻ひげやあごひげを生やしたあの男を六本木の通りで見た。 |
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